加盟店のレベルを維持向上させる人材採用支援から教育研修機能〜フランチャイズ本部に必要な10の機能を解説〜

ページコンテンツ

フランチャイズ・チェーンは、本部と加盟店が同一ブランドの下、同じ事業を展開します。したがって、お客様に対しては直営店であれ、加盟店であれ、まったく同じ商品・サービス・イメージを提供することが求められます。そこで重要なのが、本部ノウハウを加盟店が忠実に再現するということです。そして、そのために力を発揮するのが本部による加盟店に対する教育研修機能です。開業前に基本的なノウハウを身に付けさせるだけではなく、加盟後も継続的に加盟店がブランドイメージを維持できるように本部が教育することが、フランチャイズ・チェーンとして成功するためには欠くことができません。

開業前研修

開業前研修は、加盟店がフランチャイズ契約を交わした後、当該事業を始める際に必要な基本的な知識やスキルを身につけてもらうための研修です。研修内容の構築に際してまず重要な点は、研修によって受講者をどのレベルにまで到達させるのかということです。到達レベルを勘案した上で、研修カリキュラム、研修方法、講師、テキストを決定します。

また、開業前研修で忘れてはならないのが「理念の共有」です。形だけ真似てもなかなか本部の要求する運営は困難です。加盟店に対して本部の理念・考え方を十分に伝え、共感してもらうことが開業前研修の成果をあげるための最大のポイントです。

次に、カリキュラム構築に際しては「素人でも短期間でノウハウ修得が可能」なことが求められます。フランチャイズ加盟は「時間を買う」ことを意味します。したがって、開業前研修があまり長期間を要することは望ましいことではありません。できれば一~二週間以内、最長でも三ケ月程度で必要なスキルを身につけられるような、ノウハウの標準化と効率的な研修体制の構築がポイントとなります。

研修のスタイルとしては、「OffJT」と「OJT」があります。「OffJT」とは職場外訓練といわれる研修スタイルです。いわゆる「座学(職場から離れて、講義を受ける形式のこと)」で知識やスキルの習得に適した研修です。「OJT」とは、職場内訓練という意味です。職場内で実際に業務を行いながら学ぶスタイルの研修です。実際の業務遂行能力を身につけるのに適しています。実際の研修では、「OffJT」と「OJT」とを有機的に組み合わせることでその実効性をあげていきます。

開業後研修

フランチャイズ本部は、開業後もノウハウの維持や理念の共有などを目的として、定期的に加盟店を教育する役割を担わなければなりません。さらに新商品の発売やオペレーションの改善変更などに際しても、新たなノウハウを提供するために研修を実施することが求められます。例えば、飲食業では新メニューの導入時には調理方法の研修が必要です。また、サービス手順が変わればサービス研修も必要となります。このように本部は、事業継続に必要なノウハウ提供のために、加盟者に対する継続的な教育研修機能を保持することが求められるのです。

また、研修機能充実のためには、トレーニングセンターなどの本部施設の設置も必要です。店舗を再現してロールプレーイングなども行えるような施設を持つことで、研修内容の効率化と効果性をアップさせることが可能となります。さらに、OJT実施場所として直営店の活用も必要です。その際、最も留意すべきポイントは、直営店でのオペレーションの標準化を徹底しておくことです。OffJTで学んだノウハウが直営店ではまったく違う方法で行われているなどということは、受講者を却って混乱させてしまいます。

会議体系

研修以外にも本部、加盟店間の情報共有やチェーンの一体感の促進などを目的として、定期的にいくつかの会議が運営されているのが一般的です。全国のオーナーを集めて本部方針の発表や優秀店舗に対する表彰などを行うオーナー会議(全国オーナー大会など)、日常運営のサポートを目的とした店長会議(事業責任者会議)などが実施されています。実施頻度や参加者などは、それぞれの目的やスーパーバイザー機能と調整の上決定されます。

マニュアルは本部のバイブル

フランチャイズ・チェーンでは、加盟店が本部の方針やノウハウに忠実に活動することが成功につながります。その方針やノウハウを標準化、ビジュアル化したものがマニュアルです。本部ノウハウは、マニュアル化されて初めて加盟店に対して伝達することが可能となります。そして、ノウハウ修得の場が研修です。従って、フランチャイズ・チェーンにおいては、マニュアルこそが本部のバイブルであり、研修の際の唯一のテキストとしての役割を担っているのです。市販の一般的な書籍をテキストにしても実際のノウハウは身につきません。本部の理念は理解できません。したがって、本部がそのノウハウを効率的に加盟店に提供するためには、マニュアルの整備が最も重要な要件となるのです。

マニュアル体系

フランチャイズ・チェーンにおいては、マニュアル内容や必要項目などは業態や本部ノウハウによって自ずと違ってきます。とはいえ、フランチャイズ・チェーンに共通のマニュアル体系はあります。一般的にフランチャイズ・チェーンで作成されているマニュアルをテーマ別に紹介します。

<フランチャイズ本部のマニュアル体系例>

(加盟店向け)
◆オーナー(店長)マニュアル(オーナー(店長)としての心構え、経営に関するマニュアル)
◆オペレーションマニュアル(事業運営全般に関するマニュアル)
◆クレンリネスマニュアル(店舗清掃に関するマニュアル)
◆クレーム対応マニュアル(顧客クレーム対応に関するマニュアル)
◆危機管理マニュアル(緊急時対応に関するマニュアル)
◆事務処理マニュアル(事務処理、本部報告に関するマニュアル)

(本部スタッフ向け)
◆加盟店開発マニュアル(加盟店開発業務に関するマニュアル)
◆立地判定マニュアル(出店立地を判定するためのマニュアル)
◆スーパーバイザーマニュアル(スーパーバイザー業務に関するマニュアル)
◆危機管理マニュアル(緊急時対応に関するマニュアル)
◆事務処理マニュアル(本部事務処理と加盟店からの報告に関するマニュアル)
◆オープニングサポートマニュアル(加盟店の開業業務に関するマニュアル)
前記以外にも最近は個人情報の取り扱いに関するものやコンプライアンスなど法整備に伴って企業に要求されるものも本部として整備することが要求されます。

マニュアル作成の手順と留意ポイント

マニュアルはテーマに関わらず、効率的な作成手順と留意すべきポイントが存在しますので、ここで紹介します。

<マニュアル作成手順>

①テーマごとにマニュアルの目的と伝えることの明確化を行う
②作成担当者(部署)を決定する
③目次を作成し、マニュアル化すべき事項を明確化する
(業務に関するマニュアルに関しては、テーマと時系列両面からまとめる)
④項目ごとに表現方法を明確化する
⑤決定したそれぞれの表現方法で作成する
⑥完成したマニュアルを実際の業務とすり合わせる
⑦あるべき業務内容に対応して内容を修正する
⑧マニュアル間の調整を図った上で全体マニュアルとして体系化する
⑨改定手順と責任部署を明確化する
⑩関係者に研修を実施してマニュアル内容の浸透と標準業務の徹底を図る
⑪フランチャイズ本部マニュアルとして加盟店研修に活用する

<マニュアル作成留意ポイント>

次にマニュアルを作成する際の留意ポイントを紹介します。作成者は常に以下の点を勘案して「実際に使われるマニュアル」作りを目指すことが重要です。
◆顧客満足が第一になっていること
◆業務の単純化、標準化、専門化が徹底されていること
◆実際の業務に基づいていること
◆表現に曖昧なところがなく、わかりやすいこと
◆コストと内容伝達に最も適切な表現方法を採用すること
◆使われることを前提とした体裁と構成になっていること
◆責任部門が明確で定期的に改定が行われること

トレーナーの適性と育成

研修を効果的かつ効率的に実施するためには、マニュアル整備と並んで研修を実施するトレーナーが重要な役割を担います。しかし、事業運営の経験者であれば、誰でもがトレーナーになれるというわけではありません。トレーナーに相応しい要件を備えた上でトレーナーとしての訓練を積んで初めて一人前のトレーナーと言えるのです。

トレーナーの適性は?

ここでは、、トレーナーに相応しい人材の要件とその育成における留意ポイントを説明します。
フランチャイズ・チェーンにおけるトレーナーには、以下のような多岐にわたる要件が求められます。

1)当該業務に習熟していること

フランチャイズ本部における研修内容は、一般的な知識や情報の提供などではありません。自社の方針や理念の共有及び当該業態に即した実践的な研修が中心になります。したがって、研修を外部機関に委託してということは困難です。それゆえ、トレーナーは、当該業務に精通し、直営店でも実際に部下の育成に当たった経験を有する人物が適しています。

2)社会人としての常識と情熱を備えていること

トレーナーには単に知識やノウハウを教えるテクニックだけが求められているわけではありません。まず、社会人として常識と落ち着いた態度、身だしなみ、言葉遣いなどは当然備わっていなければなりません。そして、教育者としての情熱と誠実さを併せ持っていることもトレーナーに求められる重要な用件です。

3)トップに感情移入できていること

フランチャイズ・チェーンは「理念の共有」、つまり加盟者がどのくらい本部理念に共鳴しているかにその成功がかかっていると言われています。したがって、トレーナーは教育研修を通じて本部理念を加盟者に浸透させることが重要な役割となります。そして、そのためには、経営トップと同じトーンで本部理念を語れることが求められます。つまり、トレーナーがトップに感情移入できていることがトレーナーの要件の第一歩となるのです。

4)リーダーシップ力に優れていること

トレーナーにも経営幹部同様のリーダーシップ力が求められます。多くの研修参加者を動機付け、研修受講後さらに前向きに業務取り組んでいこうというきっかけ作りもトレーナーにとっての大きな役割です。単に、知識やノウハウを教えるというよりは受講者をいかにやる気にさせるかということがフランチャイズ・チェーンにおける教育・研修には大切なのです。

育成ステップと組織運営

当該業務に対する知識・経験が豊富なだけでは人に教えることはできません。人に教えるためには、「教える技術」が必要です。トレーナーは絶えず自己の指導技術を磨くことが求められます。従って、当該業務を経験することから始まり、トレーナーとしての訓練、経験を積んで初めて一人前のトレーナーとして認められるようになるのです。

フランチャイズ・チェーンにおけるトレーナーの育成ステップは、以下の通りです。
1)直営店で実務経験を積む(店長経験者から選ぶ)
2)マニュアル作成作業に参画する(責任者として実際に作成する)(マニュアルが完備されている場合は、内容の理解と改定作業に従事させる)
3)マニュアルを活用して教える方法を身に付ける(研修方法を学ぶ)(必要に応じて外部の研修を活用する)
4)研修実施により、研修技術の高度化を図る(実際に新入社員や本部スタッフなどに教育することで教育方法を検証し、研修技術を身に付ける)
5)トレーナーのレベルに応じた評価、資格制度を導入し、自己啓発を継続する仕組みを構築する

また、フランチャイズ・チェーンにおける加盟店向けの教育研修は、通常の企業のように人事部門が社員教育する場合とは異なります。加盟店が本部ノウハウを修得し、本部のブランドイメージを維持し続けるためのものです。したがって、その機能は、フランチャイズ本部の運営部門(スーパーバイザー機能)と密接な関係を持って運営することが要求されます。そして、トレーナーもスーパーバイザー業務を十分に理解した上で研修を実施することが求められます。

人材採用支援機能も必須に

近年は加盟店での人材採用が難しくなってきています。そこで、フランチャイズ本部として加盟店で働く人材の募集や採用に向けた様々な活動を支援するという動きが活発になっています。また、加盟店で急に人材が不足した場合に緊急に応援に人を派遣するなどの緊急対応や加盟店オーナーの休暇取得のために代替人材の派遣などを行う体制整備も求められています。それぞれの店舗の人材採用に関しては、加盟店任せという時代は終わりつつあります。

開業支援

開業支援機能が加盟店成功のスタート

フランチャイズ・チェーンにおいては、加盟店が永続的に繁栄することが成功の最大の鍵となります。
そして、そのためには、開業時が最も大切なのです。開業時にうまく軌道に乗らないと業績を回復させるまでに多額の資金と期間が必要になってしまいます。また、開業時にお客様の満足度が低いと再来店率が著しく低くなって、結果として開業後まもなく急激に業績が悪化してしまうということもあります。したがって、フランチャイズ・チェーンを成功させるためには、加盟店をスムーズにトラブルなく開業させ、予定通りの業績を達成させることが最も重要となるのです。そのための本部機能を開業支援(オープンサポート)機能と呼びます。詳しくは以下の通りです。

開業支援機能とは

開業時の大切なことの一つに、トラブルのないオープンというものがあります。フランチャイズ・チェーンでは、経験のない加盟者が開業するわけですから、本部が適切なサポートを行わなければトラブルは起こって当たり前です。したがって、本部は事前に起こりうるトラブルを想定し、それを回避できる仕組みを作っておくことが求められます。過去の経験に基づいて事前の準備業務を標準化し、それぞれの業務進捗を管理する体制を構築することが必要なのです。オープンサポート業務には以下のようなものがあります。

<オープニングサポート業務一覧>

1)開業前本部研修の実施と加盟店研修の実施サポート
2)店舗(事業所)の設計~施工に関する業務の標準化と発注業務の定型化
3)什器・備品等の調達一元化と発注~納品までの標準化
4)広告宣伝、販促計画の標準化と実施手配の一元化
5)商品、材料、資材などの発注業務の標準化と手配の一元化
6)開業前準備(商品陳列、備品等の配置など)の標準化
7)加盟店従業員採用業務の標準化と採用支援体制の構築
8)開業前業務のスケジュール化と進捗管理体制の確立
9)開業時の本部応援業務の標準化
10)本部応援人員のリストアップと応援体制の確立

開業前業務チェックリスト

前記のオープニングサポート業務は、限られた期間内に同時並行で進められます。したがって、誰がいつ取り掛かるのか、誰がどこに発注するのか、誰が決定するのかなどを一元的に管理しておかないと業務遅れや発注ミスなどを生んでしまいます。そして、さらに実際に当該業務にどの程度の期間が必要か、外部企業等と提携することで業務を簡素化できないかなど、常に業務改善と標準化を推進しておくことが求められます。

開業時の「正のサイクル」を実現する

開業時に予定通りの業績を確保することが加盟店オーナーのやる気を喚起し、将来への希望を高めます。したがって、開業当初に予定通りの業績を確保できるよう、本部にとっては、立地判定基準の明確化と開業時販促手法の標準化は不可欠となります。立地判定は前述したように加盟店開発機能として出店可否を見極めるための基準作りが大切です。そして、開業時販促に関しては、どれだけの販促施策を実施すればどの程度のお客様に来店いただけるかという目安を本部内で保持するということです。開業時に予定通りの業績が達成できれば、その後の販促施策にかける費用や人員配置も予定通りかそれ以上を期待できます。そして、そうした「正のサイクル」を実現することこそが加盟店の繁栄を支えるのです。「開業時の売上が計画通りいかなかった。そして、人件費や販促費用を削ってでも短期的に利益を確保しようとする。しかし、人件費や販促費用を削ったことで、結果としてさらに売上を下げてしまう」という「負のサイクル」は、フランチャイズ・チェーンが決して陥ってはいけないものなのです。

スーパーバイジング機能は加盟店の繁栄を支える

スーパーバイザーとは

スーパーバイザー(Supervisor)とは「監督者、指導者、管理者」を意味し、建築現場の監督やコールセンターの管理者などを表す言葉として使われています。また、スーパーバーザーは頭文字をとって「SV」という略称で呼ばれることも多いようです。さらに、一部コンビニエンスストアでは、OFC(オペレーションフィールドカウンセラー)などと呼ばれたりもしています。

フランチャイズ・チェーンにおけるスーパーバイザーとは、「加盟店と本部の永続的な繁栄を目的として、加盟店が本部方針に従って正しく運営されるよう、適切な指導、助言、支援、管理を行う本部スタッフ」のことです。スーパーバイザーは、加盟店の繁栄を実現することが非常に大きな目的となります。単に本部方針に沿って運営されているかどうかをチェックするだけの人ではありません。スーパーバイザーには、店舗を巡回してチェックリストに基づいて問題点を指摘するだけというようなイメージがありますが、そうした業務はほんの一部で、加盟店を成長させ経営を安定させるためにオーナーと一緒になって考え、行動する役割を担っているのです。

しかし、一方では本部スタッフとしての立場も重要です。加盟店が繁栄すればそれでいいというわけではありません。本部が適正な利益を確保できる、ブランドイメージを維持するなど本部スタッフとして守るべきことも多く求められます。

スーパーバイザーの適性と育成

スーパーバイザーは、フランチャイズ・チェーン成功のために非常に大きな役割を担っています。従って、誰でもがすぐにスーパーバイザーとして活動できるわけではありません。豊富な知識と経験そして自社業態に対する愛情と業務に対する情熱がなければなかなか成功できません。従って、スーパーバイザーを育成するためにはその要件を社内で明確にしたうえで計画的に育成していくことが求められます。

スーパーバイザーには以下のような資格要件が求められます。
◆ストアマネージャー(店長)かそれに準じる経験者である(業務に精通している)
◆リーダーシップを発揮できる
◆コミュニケーション・ヒューマンリレーション能力が高い
◆経営数値に関する知識を有している
◆高いマネジメント能力を有している
◆フランチャイズシステムに関する知識を有している
◆企画力に優れている
◆加盟店に“NO”が言える
◆常に物事を冷静かつ客観的に判断し評価できる
◆自己啓発を継続できる

これらの要件を満たす人だからといって、明日からスーパーバイザーになれるわけではありません。まず、重要なことは、当該業態に習熟しているということです。
したがって、スーパーバイザー候補には実際の店舗での実務経験が求められます。そして、スタートしたばかりの本部では、なかなか時間をかけて育成するという余裕がない場合は、直営店から優秀な店長を抜擢することが最適な方法となります。しかし、優秀な店長を本部に異動させたら、せっかく好調な直営店の業績が下がってしまうかもしれない不安が大きいという理由から外部からの採用や若手人材の登用ということを考えるところもあります。ただ、スーパーバイザーはフランチャイズ加盟店の成功を左右します。従って、ある程度加盟店が増え、スーパーバイザー業務の標準化が進んできた段階で、若手人材を育成していくことが望ましいようです。

スーパーバイザーの育成には、
◆ スーパーバイザー候補の現場実習
◆ スーパーバイザーマニュアルによる初期研修
◆外部機関等によるスーパーバイザー研修の受講(例:一般社団法人日本フランチャイズ・チェーン協会のスーパーバイザー学校など)
◆ 先輩スーパーバイザーによるOJTの実施
などがあります。

これらの方法を複合的に活用し、継続的な教育を行うことによってスーパーバイザーとしてのレベルアップを図っていきます。

スーパーバイザー業務の実際

フランチャイズ・チェーンの成功の鍵を握るスーパーバイザー業務については、業態の特性や本部方針によって業務内容は若干異なりますが、共通する部分も多くあります。ここでは、どんな本部にも共通するスーパーバイザー業務の基本を紹介します。

スーパーバイザーに求められる機能:5C+P

スーパーバイザーには多様な機能が求められます。これらの機能はそれぞれの英語表記の頭文字をとって「5C+P」と呼ばれています。
◆コンサルティング機能  Consulting
◆カウンセリング機能   Counseling
◆コミュニケーション機能 Communication
◆コーディネーション機能 Coordination
◆コントロール機能    Control
◆プロモーション機能   Promotion

近年は、これに「コンプライアンス機能(Compliance,法令遵守)」が加わることもあります。

◆コンサルティング機能

コンサルティング機能とは、加盟店の経営全般に関するコンサルティングを行う機能です。担当店舗の現状を把握し、問題を抽出することから始まります。問題とは「あるべき姿と現状のギャップで解決すべき事項」と定義されています。問題解決に向けた適切な施策を立案し、実行サポートすることで、担当店舗の経営改善を実現することがコンサルティング機能です。

◆カウンセリング機能

カウンセリング機能については、加盟店のオーナーや店長の悩みを聞いてあげる、ということが仕事となります。「話をじっくり聞いて、理解してくれた上でアドバイスをもらった」と感じてもらえるような「良き相談相手」になることが求められます。

◆コミュニケーション能力

スーパーバイザーに最も求められるのは、コミュニケーション能力です。一般にスーパーバイザーが実施するコミュニケーションには次のようなものがあります。
①情報提供
②情報収集
③方針徹底
④依頼
⑤クレーム対応
⑥相談

これらを円滑に行うためには、コミュニケーションの基本的手法を理解して活用することが重要になります。そして、本部と加盟店間の双方向のコミュニケーションルートを確立することもスーパーバイザーの大きな役割です。また、本部と加盟店間のコミュニケーションには様々な手段があります。それらの手段を効果的且つ効率的なものとして構築することも非常に重要です。

◆コーディネーション機能

コーディネーション機能は調整するという機能です。加盟店で問題が生じたとしても、すべてをスーパーバイザー一人で解決するのが困難な場合も多いのです。そこで、本部の上司や他部門のスタッフ、外部の専門家などの協力を得る必要が発生します。そんな場合に、調整を行って協力を得ることがこの機能を意味します。

◆コントロール機能

コントロール機能は「点検および統制」機能と言い換えることができます。つまり加盟店が決められたとおり、あるいは計画通りに運営されているか絶えずチェックし、問題があれば是正措置を講じる機能を指します。

◆プロモーション機能

最後はプロモーション機能です。プロモーションとは販売促進のことを指します。通常フランチャイズ本部では全体販促といわれるチェーン全体の販売促進を計画的に実施します。そして、それに加えて、加盟店毎に個別販促を実施する場合もあります。その部分をサポートする機能がスーパーバイザーのプロモーション機能です。

情報システム・会計機能はフランチャイズ・チェーンの血管

フランチャイズ・チェーンにおける情報システムとは

フランチャイズ本部が構築する情報システムの基本目的は、フランチャイズシステムを効率的に維持し、さらに発展させるためのコミュニケーションルートとデータベースの構築にあります。フランチャイズ・チェーンでは、本部が商品開発や販促企画などのマーケティング機能や商品や原材料を供給するサプライ機能などを担い、加盟店は営業活動に専念するという役割分担となっています。

加盟店と本部は、それぞれ役割分担をしながらお互いに有機的に結びついて初めて成功できます。特に最近はタイムリー且つスピーディーな情報収集、伝達の仕組みを保持することがフランチャイズ・チェーン成功の鍵となっています。また、通常フランチャイズ・チェーンでは、本部は加盟店からフランチャイズフィーを徴収します。そのためには、本部が加盟店の収益状況を正確に把握することも重要な要件です。当然、加盟店の繁栄のために効果的なサポートを行う上でも加盟店の会計情報を本部が把握することは非常に重要です。そして、その手段として情報システムは非常に大きな力を発揮します。

最近では、パソコンと通信手段の発達によって大きなデータの情報流通が可能となっています。そうした環境変化に対応して本部から加盟店へ提供する情報量も膨大になっています。したがって、本部と加盟店間のコミュニケーション手段としての活用はますます高まり、情報システムなしでは、フランチャイズ・チェーンは維持できなくなっているのが近年の傾向です。

情報システム構築は要件定義が最重要

情報システムを構築する際、先行している他社システムを参考にするのはいいのですが、あくまでもそれは参考であって、真似をするという訳にはいきません。最初に考えなければならないことは、自社のフランチャイズ本部としてのあり方に基づいた情報システムを構築することです。情報システムはあくまでも手段です。本部としての方針を実現するために最適なシステムを構築することが最も大切です。そのためには、システム構築時の要件定義を厳密に行うということです。そして、そのためには、本部と加盟店のそれぞれの業務を熟知した上で検討することが欠かせません。机上の使えないシステムを作ってしまうことがないようにすることが最も大切なことです。
「どんな本部機能を構築するのか」、「加盟店にどんな情報を提供したいのか」、「加盟店からどんな情報を収集する必要があるのか」、「商品供給の方法は、配送頻度は」、「代金決済の方法は」、「店舗運営に関して必要な情報は」など情報システムにどういう目的を持たせるのかを明確化することがシステム構築の第一歩となります。

情報システムに関わる将来の費用負担も想定して

情報システムを取り巻く環境は信じられないスピードで変化しています。従って、一度構築したシステムを何十年も使い続けるということは、ソフト、ハード共に不可能です。そこで、数年に一度程度は、定期的にハードもソフトも見直すことを想定してシステムを構築することも必要です。定期的にソフトのバージョンアップとハードの更新を想定したうえで、システム関連費用を将来に渡って誰がどういう形で負担するのかの規定も必要です。バージョンアップしたいのだけれど、加盟店が同意しないので費用が捻出できないため何年もソフトを変えられないという本部があります。さらに「システム保守」に関しても事前に対応を検討しておくことが重要です。システム保守には継続的に費用がかかります。本部が全て負担すると思わぬ出費になってしまいます。したがって、ハード、ソフトの導入費用に加えてバージョンアップと保守に関しては、責任部署と費用負担を想定した仕組みづくりが必要です。

さらに、最近はセキュリティ対策も非常に重要です。個人情報保護法の施行もあって、セキュリティ対策は非常に重要な要件になっています。

マーケティング機能はチェーン競争力維持の要

様々な競合との競争にさらされるフランチャイズ・チェーンにおいては、競合店との競争に打ち勝つために、他と差別化された強みを保持し続けることが不可欠です。そして、他との差別化を実現するために最も重要な機能がマーケティングです。フランチャイズ・チェーンにおいては、マーケティング施策の立案と実施に向けたサポート機能は本部の大きな役割です。本部が担うマーケティング機能には、商品戦略の立案と実施および広告宣伝、販売促進施策の立案と実施サポートがあります。本部が計画を立案し、加盟店が営業に専念するという役割分担がうまく機能することでフランチャイズ・チェーンは繁栄します。したがって、本部はチェーン全体の競争力を維持、向上させるため、継続的にマーケティング機能の充実を図ることが求められます。つまり、フランチャイズ本部は「他にない商品・サービスを提供し続ける」ことを通じてお客様の満足を創造し、「また利用したい」と感じていただけよう「ブランドをきちんとお客様に認知」してもらうための施策を適切に実施していくことで「競合他社」に打ち勝っていく、すなわち競争力を維持するということになるのです。

継続的な商品開発が業態の進化には不可欠

商品・サービスは企業競争力の根幹を支える最重要な要素です。通常、フランチャイズ・チェーンとしてスタートする場合は、いわゆる「名物商品」と呼ばれる、他社にない非常に強い商品やサービスを保持しているものです。しかし、お客様はいつでも、いつまでも同じ商品だけを欲するわけではありません。お客様のニーズは信じられないスピードで変化します。さらに多くの競合商品がどんどん出現してきます。したがって、チェーンの競争力を維持するためには、新商品・サービスの開発を継続しつづけなければ、お客様のニーズに応えられなくなってしまいます。

継続的な新商品開発成功のためには、
・加盟店を通じて、お客様のニーズなど情報収集機能を構築する
・テスト店を設置してお客様の反応を探る機能を設ける
・専任スタッフを置いて、計画的な業務推進を徹底する
ことが必要となります。

広告宣伝は原資の確保を

フランチャイズ本部が行う広告宣伝は、チェーン全体の認知度向上や、新商品・新サービスの告知を目的としています。テレビCMや雑誌広告などが多く使われますが、このような全体広告は加盟店の売り上げアップのためには非常に有効な手段となります。しかし、このような全体の広告宣伝には多額の費用が発生します。したがって、本部が行う広告宣伝に関する費用の原資をどうするかということは、本部立ち上げ時から考慮しておくことが必要です。加盟店が100店を超えたら各店から費用を徴収してテレビ宣伝を実施しようというような考えだと、1店でも反対するところが出てくると実施できないというようなことにもなりまねません。したがって、当初から広告宣伝の実施とその費用に関してはある程度先行的に仕組みを構築しておくことが必要となります。具体的には毎月定期的に広告宣伝分担金を徴収する。加盟店が少ない段階は、業界紙への広告を実施する。加盟店が100店を超えたらラジオを、200店を超えたらテレビをというような計画を想定して仕組みを作るということです。

販売促進施策の実施は計画的に

一方、販売促進施策は広告宣伝と違って、加盟店の協力なしには実施できません。本部が計画を立案して加盟店が実行するということになります。したがって、キャンペーンやイベントなどの販売促進施策を成功させるには、
・加盟店が前向きに取り組みたいと考える内容とする
・加盟店が実施内容を十分に理解している
・お客様に対する告知が十分にできている
状況を作ることが求められます。

つまり、最も必要なことは、お客様のニーズとともに加盟店の要望も販売促進施策に反映させる。さらに、加盟店に対して内容を十分に理解してもらえ、スーパーバイザー等を通じて実施に向けた準備が十分に徹底できることが成功のためには不可欠となります。

そして、そのために重要な点は計画を先行的に立案すること、加盟店に対する告知説明の期間を十分に取ること、加盟店に対して内容徹底の手段を確立することが重要となります。

供給(サプライ)機能:本部から“もの”を供給する仕組みを構築する

フランチャイズ・チェーンは、本部と加盟店が同一ブランドの下、同じ事業を運営することで成り立っています。したがって、本部は加盟店が同一イメージで同じ業態を運営するために必要な商品や原材料及び資材等を供給する義務があります。したがって、フランチャイズ・チェーンを永続的に維持するためには、商品や原材料及び資材等の“もの”を継続的に供給する体制を整備することが求められます。

供給頻度とエリア

もちろん、ただ単にものを供給すればいいというわけではありません。チェーン本部の収益性を考えれば、当然そこには効率性も求められます。つまり、コストを最低限に抑えるということが併せて求められるのです。供給エリアが広い上に加盟店が点在しているために物流コストが膨大になる、というのではせっかく上げた利益が水の泡になってしまいます。しかし、コストを重視しすぎると、供給体制が十分に整備できないために本来毎日配送しなければならないところを、週に二回しか配送できないというようなことになってしまうと、加盟店の成功は難しいと言わざるを得ません。

したがって、供給機能に関しては、計画的なエリア拡大と店舗数の増加に対応して体制を整備することが不可欠です。加盟希望者が出てきたので取りあえず供給機能は不十分だけれど開店させてしまおうというようなことでは本部としての成功を危うくしてしまいます。

供給体制と価格設定のポイント

供給機能に関しては、自社でまかなうという選択と外部の協力業者と提携して体制整備を行うという考え方があります。どちらが正しいという訳ではありません。また全てを自社でまかなうか一部を外部に委託するかについても自社に最も相応しい方法を選択する必要があります。たとえば、物流機能だけは外部に委託するが製造と保管は自社でまかなう。もしくは、製造から物流まで全てを外部に委託するという選択もあります。本部立ち上げ当初は加盟店数も少ないので他社に委託するが加盟店が一定以上になった時点で、自社内で対応するというように、段階を追って供給体制を変化させる考え方もあります。

供給体制の構築に際して留意すべきポイントは、
・加盟店の運営に支障をきたすようなリスクはないか
・本部の利益を十分に確保できるか
・商品製造面等でチェーンのノウハウが外部に流出しないか
などです。

自社で全てを対応することで却ってリスクを増大させたり、コストが増加したりということもあります。社内で全てまかなうことで、厳しさが足りなくなったり、体質的に甘えの構造が醸成されたりということもよく起こります。したがって、リスクの回避とコスト低減のためには、外部との協力体制を築くという選択は非常に重要です。

そして、供給体制構築においては、
◆供給するものの範囲を明確にする
◆納品頻度、受発注のタイミングを決定する
◆フランチャイズ・チェーンとしての将来像を明確にする
◆店舗数と展開エリアを計画化する
◆具体的な計画に対して、もっともコストバランスがよい体制を選択する
などに留意することが求められます。

さらに、“もの”の価格設定は、本部と加盟店の収益性に大きな影響を与えます。加盟店の収益面を考慮しすぎて本部の収益性を損ねてしまうということもあれば、逆に本部の収益確保を重視しすぎて魅力ある加盟店収益が実現できなくなる場合もあります。したがって、供給機能はフランチャイズ・チェーンの収益性にも密接に関係しています。