フランチャイズ・チェーンに関することで、「エリアの権利を渡して、その地域での出店を加盟店に任せたいのだが、どう思いますか?」という質問がしばしばあります。
フランチャイズ・チェーンでは、フランチャイズ本部が資本関係のない加盟店とチェーン展開をしていきます。加盟店同士は、同一ブランドで同じ事業を行うものの、それぞれが独立した存在です。
独立した事業者である加盟店が、できるだけ良い条件で営業したいという欲求を持つことは自然なことです。ですから、自店の周りには同じチェーンの加盟店は少ない方が良い、できるだけ近くにはないほうが良いというのが、加盟店という願望を持つことも自然なことだと言えます。
一方で、フランチャイズ・チェーンは多店舗化を実現できて初めて成功できるわけで、フランチャイズ本部としては、各地域でシェアを多く取りたい、可能な限り多くの店舗を出店したいと考えています。
そこで、よく問題になるのが加盟店の営業できる範囲(テリトリー)についてです。
人口2万人で十分に成立できる業態であるにもかかわらず、人口10万人商圏を要求する加盟者もよくいます。ほとんど自店の商圏とは言えないような場所に、新規で加盟者が出店したいという話があるという噂を聞いただけで、本部にクレームを鳴らすような加盟店もあります。
とはいえ、FC本部側が「あの店はうるさいので、半径5km以内には出店しないけれど、こちらは比較的おとなしいので半径2kmでも出店しよう」などという姿勢では、FC本部と加盟店のトラブルはなくならず、多店舗化の推進が困難になってしまいます。
このようなことから、フランチャイズチェーン発展のために、FC本部は自社の業態に最適なテリトリーに関する考え方を明確にしたうえで、契約にきちんと反映させることが大切であることをご理解いただけると思います。
そうした背景を踏まえて、ここでは自社の業態に最も適したテリトリー規定を検討できるようにいくつかのテリトリー設定の考え方を紹介します。
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テリトリー制(複数FC加盟の権利)
テリトリー制とは、フランチャイジーに対して、一定地域内での営業の独占権を与える制度をいいます。
テリトリー制には、「ロケーション制」「クローズドテリトリー制」「オープンテリトリー制」の3つの考え方があります。以下、一つずつ解説していきます。
ロケーション制
ロケーション制は、店舗や事務所などの設置場所を特定するテリトリーの形態です。
営業エリアの設定やその範囲内での加盟店(フランチャイジー)の権利を設定しているわけではありません。したがって、店舗のすぐ隣に他の加盟店や直営店が出店しても文句が言えないような規定になっている場合が一般的です。
コンビニエンスストアやカフェなど、比較的小さい商圏で店舗型の業態に多く見られます。しかし、「隣に出店してもいい」とは言っても、加盟店が一定以上の収益を確保できるよう配慮することもFC本部の義務です。
加盟希望者がいるからといって、闇雲に出店を許可するということにはなりません。ロケーション制はとるものの半径1km以内には出店しないというような規定を設けているFC本部もあります。
クローズドテリトリー制
クローズド制とは、当該エリア内では、一事業所・一店舗のみに権利を付与するというものです。
個人宅や事業所などに対して訪問販売法式を取る業態や比較的広い営業エリアを必要とする住宅販売などに適用されることが多い方式です。
FC契約で決められたエリア内では、一加盟者のみが営業を独占的に行えるので加盟者にとっては比較的安定した収益が見込めます。しかし、本部はエリア内の権利を付与してしまうので加盟者が積極的に営業活動を展開しないとチェーンとしての潜在需要を獲得できなくなる場合も生じてしまいます。したがって、むやみに広いエリアを付与したり、営業活動を行わない場合を想定した規定を盛り込むなどの対策も必要となります。
オープンテリトリー制
クローズドテリトリー制とは異なり、ひとつのエリアを複数の加盟者に営業する権利を認めるタイプを指します。
FC契約で設定したエリア内では数軒の加盟店が自由競争になるというわけです。
ロケーション制と違って、営業拠点に制約があるわけではなく、当該エリア内で自由に営業活動ができます。
ただし、同一ブランドでお互いに競合状態になる可能性があるので、お客様にブランドイメージの混乱を与えたり、同一ブランド内で価格競争が起こる可能性もあります。
エリア内の競争を促進することで、潜在顧客の掘り起こしが可能となって競合他社との競争力が増す可能性は高まり、いわゆる不活性加盟店が淘汰されるというメリットも持っています。
フランチャイズにおけるエリア制とは
次にエリア制について解説します。
エリア制とは、当該エリアにおいて複数店舗を展開する権利を与える制度です。
一定のエリア内で独占的に複数店展開を認める制度で、直営店のみを出店できる制度とフランチャイズ加盟店も展開できる制度の二つの制度があります。以下それぞれについて説明します。
サブ・フランチャイズ・システム
フランチャイズ・システムでは、フランチャイザーとフランチャイジーがひとつの店舗や事業所を運営するのに対して、それぞれ契約を結ぶのが一般的です。従って、一契約一ユニットが原則となっています。
一方、サブ・フランチャイズ・システムは、フランチャイザーがフランチャイジーに対して、一定の地域において、第三者にフランチャイズ権を付与することを認めるという考え方に基づいた仕組みになっています。日本では、フランチャイザーからこの権利を付与されたものをサブ・フランチャイザーと、店舗を運営する者をフランチャイジーと呼ぶことが一般的です。欧米では、サブ・フランチャイザーをマスター・フランチャイジー、フランチャイジーをサブ・フランチャイジーと呼ぶ場合が多いようです。そして、この場合は契約のことを「マスターフランチャイズ契約」と呼んでいます。
また日本では、サブ・フランチャイザーを地域本部、エリア本部等という呼び方をする場合もあります。
エリア・ディベロップメント・システム
サブ・フランチャイズ・システムは、一定エリア内で第三者にフランチャイズ権を付与する権利を与えられていますが、エリア・ディベロップメント・システムでは、当該エリア内において、自社で複数店舗を展開する権利が与えられているだけです。つまり、一定エリア内において直営店を出店する権利を持てる、ということです。
自社のフランチャイズビジネスにとって、どのテリトリー制を取ることが相応しいのか、また、エリア制については、将来的にサブ・フランチャイズシステムを取るのかなどを考えて、自社のフランチャイズを成長させるためのより良い選択することは、フランチャイズ本部を構築する上で、とても大事な検討事項なのです。