「フランチャイズ本部を立ち上げるには、何をどうすればいいんでしょうか?」
「フランチャイズをスタートするために、どんな準備をすれば良いのでしょうか?」
「フランチャイズコンサルタントは何をサポートしてくれるのですか?」など
例えば、他社のフランチャイズ契約書や加盟募集案内を参考に作成して、 まずは加盟店募集をスタートするのが良い、というやり方をする会社もあります。
そうした始め方をした場合の多くは、加盟店が増えるにしがたって、退店や本部へのクレーム、お客様とのトラブルなどで頭を悩まして、極端な場合は加盟店募集を中断するということもあります。
とはいえ、新しく始める事業ですから初めから100%の準備はできるものではありません。
一定程度は走りながら考えるという面も必要です。
ただ、想定される準備が不足していると、自社のフランチャイズの仕組みと合っていない契約内容であったり、フランチャイズ本部の体制が不十分なのに出来ると言ってしまったことが後になってわかり、結局、FC本部構築の最初のステップからやり直し、ということになりかねないのです。
フランチャイズ事業をスタートさせることは、新規事業を立ち上げると同じくらいの労力が求められます。私ども、アクアネット フランチャイズ経営研究所では、代表の民谷をはじめとする、 フランチャイズ・コンサルタントによる、数多くのフランチャイズ本部構築、 フランチャイズ本部のコンサルティング経験や知見をもとに、フランチャイズ本部を立ち上げるまでの手順を公開しています。
ここでは、その一つ、フランチャイズ本部としてスタートするまでの手順を10ステップでまとめた、フランチャイズ本部構築の10ステップをご紹介します。
「フランチャイズ本部構築」の「基本のキ」と言える内容です。 少し長めの解説ですが、自社に照らし合わせながら、読んでいただくと良いと思います。
それではさっそく始めていきましょう!
※業界用語的な表現ですが、フランチャイズ本部を始める、立ち上げることを「フランチャイズ本部構築」と言います。目次を見る
フランチャイズ本部構築の「10ステップ」とは?
フランチャイズ本部として加盟店の募集を開始するまでに行う、フランチャイズ本部構築の10ステップは以下の通りです。
特にStep6までがフランチャイズ・パッケージを明確にするために、特に重要です。 【フランチャイズ本部の立上げで失敗しないための10ステップ】- Step 1 |フランチャイズ事業の責任者・専任者の選定
- Step 2 |理念体系の明確化
- Step 3 |ビジネス・パッケージの明確化
- Step 4 |ビジネス・パッケージのブラッシュアップ
- Step 5 |ビジネス・パッケージの標準化、見える化
- Step 6 |フランチャイズシステムの内容決定
- Step 7 |フランチャイズ本部機能の整備
- Step 8 |FC本部体制の検討
- Step 9 |加盟店開発ツールの作と担当者の決定
- Step10|加盟店開発スタート
Step 1|フランチャイズ事業の責任者・専任者の選定
フランチャイズ本部立上げ時の責任者は、トップといつでもダイレクトにコミュニケーションがとれ、社内の各部門との調整もすぐにできるレベルの人材を充てることが重要です。
古い習慣や既成概念にとらわれず、自由で前向きな発想・行動ができる人がふさわしいでしょう。
そして、何よりも自社の中でフランチャイズ化する事業の経験と、事業への愛情を持っている人が最適です。
準備段階から加盟店募集の初期の段階までは、他の業務との兼任でも構いません。 ただし、FC本部立ち上げを加速し、成功の確率を上げるために、早い段階で加盟店開発などの専任者が必要になっていきます。 いつまでも他業務との兼務で進められるほど、フランチャイズ本部構築は簡単な仕事ではありません。
フランチャイズ本部を立ち上げるためのプロジェクトがまず取り組むのが、フランチャイズパッケージの内容を明確にすることです。
「フランチャイズパッケージ」とは、フランチャイズ本部が加盟店に提供する商品です。
フランチャイズパッケージは、下図のように、理念体系、ビジネス・パッケージ、フランチャイズシステムで構成されます。
これらを明確にし、フランチャイズ契約内容やFC本部のサポート概要を明確にしていきます。
Step 2 |理念体系の明確化
フランチャイズ・チェーンは、“理念共同体”と呼ばれています。 そこで、フランチャイズ本部を立ち上げる際には、まず、チェーンとしての理念を明確にし、本部スタッフが理念を共有したうえでフランチャイズ本部構築を進めることが成功への第一歩となります。
プロジェクトメンバーによって、現在の会社の理念や行動規範、創業者の思いなどをもとに、フランチャイズ加盟希望者に向けて共感を得られるような内容にブラッシュアップして明文化します。
理念体系を明文化する際の基準となる表現は以下を参考にしてください。
<理念体系>
事業コンセプト
フランチャイズ化する事業を含めた会社全体の方向性、コンセプトを明確にしたものチェーンの存在価値規定
フランチャイズ本部の事業が社会に対してどんなベネフィットを提供するかを示したもの経営理念規定
事業コンセプト、存在価値規定に基づき、会社組織がどのような方針と姿勢で、企業やFC本部を運営していくか明確にしたものチェーン化の目的規定
フランチャイズチェーン化により実現しようとしていること、なぜフランチャイズ展開するのか、将来的に目指す状態を明確にしたもの。 チェーン化の目的規定は、加盟希望者、加盟店が。Step 3 |ビジネス・パッケージの明確化
理念体系が明文化できたら、次はフランチャイズ化しようとする業態(ビジネス・パッケージ)を明確にします。
自社が直営で何店舗か運営している場合、ブランドは同じだけれど、 規模もオペレーションも商品構成も少しずつ異なるということはよくあります。
そこで、実際にフランチャイズ化する業態を明確に規定します。
ブランド、ターゲット、商品構成、店舗形態、人員体制、オペレーション、収益モデルなどを明確にします。
ブランドも業態は同じだけれど、 立地が異なるなどの複数のビジネス・パッケージを同時にフランチャイズ展開する場合もあります。
その場合は、パッケージごとに標準化を行ってタイプを分けることも考えられます。
Step 4|ビジネス・パッケージのブラッシュアップ
Step3で明確化したビジネス・パッケージは、そのままでは十分な差別化(競争力)があるかどうか。
他社との差別化では、商品面での差別化、営業面での独自の取り組み、マネジメント面での効率性など、他社にないビジネスとしても「売り」をどれだけ持てて、それを伝えられるかが、大事なポイントです。
自社ブランドの認知度を高め、早い段階で競合他社に勝るブランド認知を実現することが魅力度アップの切り札となります。直営店が1店舗などの段階の場合、事業自体のブラッシュアップを併行して進めることになります。
収益面をはじめ、競合他社との差別化を強化し、フランチャイズビジネスとしてより魅力あるもの、加盟希望者に魅力を感じてもらえる内容にブラッシュアップします。
例えば、収益面では、FC本部に対してロイヤルティなどを支払ったうえで、一定以上の利益が確保できる魅力ある水準があるかどうかです。
具体的には、初期投資額で削減できる項目はないか。売上原価、営業費用に低減できるものがないかなどを検討します。
数値面からの精査と検証を行い、営業利益率の改善、投資回収期間を短縮する方途を探って行きます。 例えば投資回収期間を3年以下、オーナー収入を年間800万円以上などの目標設定をして、改善、検証を繰り返します。
Step 5|ビジネス・パッケージの標準化、見える化
Step5は、ブラッシュアップされたビジネス・パッケージの運営の標準化と見える化です。 フランチャイズ展開では、同じブランドで複数店展開することが求められます。そのためには、店舗運営業務の標準化が不可欠です。
業務の標準化を進める際、オペレーションマニュアルなど、店舗業務を行うためのマニュアルを併行して作成していきます。既にマニュアルがある場合はマニュアルの改訂を行います。
実際の店舗にける業務を標準化して、マニュアル化して見える化するのがこのステップでの取り組みです。
もう一つ、欠かせないのが商標登録です。
フランチャイズチェーンにとって、ブランドは命です。したがって、ブランドの商標登録も欠かせない業務となります。 商標登録は先願主義ですので、できるだけ早い段階での申請することが重要です。
また、フランチャイズチェーンとしての加盟希望者に対するセールスポイントの明確化も重要です。 その本部に加盟するメリットを明確に発信することで加盟者に対して加盟促進をアピールできるのです。
さらに、次のステップで検討するフランチャイズフィーを参考にしたうえで、標準的な初期投資と損益モデルなどを作成します。
ビジネスパッケージのまとめ方について簡単に整理すると、 ブランド、顧客ターゲット、商品(サービス)構成、立地、店舗の形態、店舗の意匠、初期投資、標準損益モデル、運営方法などを標準化、見える化するのが、このステップです。
Step 6|フランチャイズシステムの内容決定
フランチャイズシステムは、フランチャイズ本部と加盟店間の権利と義務などを明文化したもので、フランチャイズ契約書に記載される内容となります。
フランチャイズシステムの概要を決める際には、本部の加盟店サポート内容を明確にすることから始めます。
開業前、開業時、開業後に本部が加盟店の運営をサポートするために具体的にどんなことを実施するのかを明確にします。そして、その対価として加盟店から加盟時と加盟後定期的にどんな名目でいくらくらいの費用をいただくのかを決め、加盟金やロイヤルティなどを設定していきます。
さらに、テリトリー規定や競業避止義務そして守秘義務など、本部と加盟店の権利と義務についても具体的に決めていきます。 これらのステップを経て、フランチャイズ契約書を完成させます。
フランチャイズ契約書はFC本部にとって重要な書面ですので、契約内容が法律や判例などから見て問題ないかなどを、弁護士のリーガルチェックを受けます。
さらに、中小小売商業振興法と独占禁止法のガイドラインに基づいて作成が義務付けられている法定開示書面と呼ばれる、FC本部の情報開示の書面を作成します。
Step 7|フランチャイズ本部機能の整備
次に、フランチャイザーとしての成功に向け、本部として保持すべき機能整備に向けた計画立案を行います。
フランチャイズ本部に必要な機能は、下図のように10の機能があります。
それぞれ重要な機能ですが、この段階で一気に具体化させる必要はありません。ただ、加盟店の拡大に応じてどの程度の機能整備が必要かという計画は必要となります。
加盟店が増えてから整備しようとしてもなかなか体制整備が追いつきません。
まずは、最初の段階でそれぞれの機能について、いつまでにどういったレベルまで機能整備を行うのかを具体的に計画する必要があります。
そして、加盟店の拡大計画に基づいて先行的に整備していくことが求められます。
Step 8|FC本部体制の検討
必要な本部機能に基づいて、本部組織作りに取りかかります。下の図が、フランチャイズ本部組織の例ですが、それぞれの部門にそれぞれ別の人材を配置することは難しいですが、経営トップがフランチャイズ本部の機能に合わせた組織がどうなるのかをイメージしているかどうかで、フランチャイズ本部運営のスピード感が違ってきます。
また、組織の意思決定を早めるために、できるだけフラットな組織構成が望まれます。あまり収益のあがらない初期の頃にはそれほど多くの人員を揃えることは困難です。従って、本部を立ち上げた初期の頃は一人がいくつかの業務を兼務してこなすことも求められます。
このように、フランチャイズ本部の運営には、少ない人員体制で、多店舗を運営するための仕組みづくりが重要なのです。
Step 9|加盟店開発ツールの作成と担当者の決定
加盟店開発のためのツール作成、加盟開発の担当者を決めます。
加盟店開発ツール
加盟店開発に必要なツールは、主に以下の通りです。
(1)加盟店募集のパンフレット
(2)加盟店募集ウェブサイト(ランディングページ)
(3)フランチャイズ契約書
(4)法定開示書面
(5)FC契約に付随する手続き書面
なお、(2)関連して、YouTubeチャンネルの開設、SNSツールの選択と開設、ネット広告媒体の検討、営業フォローメールの作成といった準備があります。これらの内容によっては準備に時間が必要になることもあります。加盟店開発担当者
そして、加盟店開発用のツール類の整備ができたら、加盟店開発活動を推進するための専任者の配置が必要となります。
フランチャイズ本部立ち上げの初期段階で最も重要な役割を担うのが、この加盟店開発担当者です。 加盟店開発担当者は、いわゆる営業担当です。いかに新規の加盟店希望者を発掘して成約するかということが最大の役割となります。
加盟店開発の体制が整ったら、加盟店開発計画の立案を行います。 フランチャイズ本部機能整備の際に大まかな加盟店開発目標の設定は終わっていますが、さらに具体的に3~5年間の加盟店開発計画を立案します。
特に初年度から2年目目までは、月次ベースで具体的な加盟契約及び開業計画を立案します、そして、その計画数に対応して、加盟見込み者を発掘するための広告宣伝計画などを立案します。
さらに、その計画をベースにして広告宣伝活動にかかわる必要経費予算の立案も行い、実際の活動に結び付けていきます。
Step10|加盟店開発スタート
加盟店開発を実施するために準備が整ったら、いよいよ加盟店を集めるための業務をスタートさせます。
つまり、フランチャイズ本部として世の中に正式にデビューするということです。
加盟希望者をできるだけ多く発掘するために、外部に向けて多くの情報発信を行います。
実際の加盟店開発のための活動としては、説明会、見学会の実施や展示会への出展などがあります。
また、そういったところに加盟見込み者を集客するための広告宣伝として、DM(ダイレクトメール)送付やSNS広告などを手配します。
加盟希望者への告知には、ターゲットによって様々な手段があります。
自社フランチャイズへ加盟してもらいたいターゲットを明確にしたうえで効率の良い媒体の選定や自社の加盟店募集サイトへの誘導方法の開発などを行うことが求められます。
ターゲットの設定には、個人、法人、同業者、異業種、法人の事業規模などいくつかの要件をもとに絞り込みます。
ターゲットが広いと対象者も増えますが、告知のためのコストも増加するのである程度の絞り込みを行ったほうが効率的な活動が可能となります。
まとめ
以上、フランチャイズ本部構築の基本ステップのポイントをご案内しました。
もう一度、見出しを確認してみましょう。
Step 1 |フランチャイズ事業の責任者・専任者の選定
Step 2 |理念体系の明確化
Step 3 |ビジネス・パッケージの明確化
Step 4 |ビジネス・パッケージのブラッシュアップ
Step 5 |ビジネス・パッケージの標準化、見える化
Step 6 |フランチャイズシステムの内容決定
Step 7 |フランチャイズ本部機能の整備
Step 8 |FC本部体制の検討
Step 9 |加盟店開発体制の整備
Step10|加盟店開発スタート
これらは、ビジネスの業態の特徴、店舗規模の大小によらず、FC本部のスタートまでにやるべき共通したことです。
実施する期間としては、最短でも4か月くらい、通常は6~8か月くらいかかります。 自社単独で取り組めるという方は、上記ステップを参考にして社内プロジェクトを発足させて、スタートしてみてください。
自社だけではやはり自信がないという経営者の方は、アクアネットにお問い合わせください。
アクアネットのコンサルタントが御社メンバーと一緒になってプロジェクトをリードいたします。
これまで300社近くのフランチャイズ本部の立ち上げを支援してきた実績を持つ、弊社コンサルタントがプロジェクトをリードすることで、フランチャイズ本部運営に必要なツール作成やマニュアルなどはスケジュール通りに整備することができ、整備内容に漏れなく、計画通りのスケジュールで、フランチャイズ本部として活動を開始することができます。