AI時代に考える加盟店開発―加盟してほしい相手と、どう接点をつくるか

広告の制作、候補企業の調査、問い合わせへの対応など、加盟店開発でもAIを活用できる場面が広がっています。

AIを使うにあたっては、自社のフランチャイズに「どのような相手に加盟してほしいのか」「その相手とどう接点をつくるのか」を、改めて整理し、深掘りしておくことが欠かせません。

募集対象を尋ねると、「個人か法人か」といった大まかな区分にとどまるケースをよく耳にします。しかし、実際の加盟店開発の現場では、もっと解像度を上げて細分化して考えているはずです。もしこのターゲット像が曖昧なままだとすれば、マーケティングの設計そのものを見直す必要があるでしょう。

ターゲットを細分化する視点は、業種業態や初期投資、本部のサポート体制などの制約条件によってまったく異なります。
対象が個人か法人かによってアプローチ方法は大きく変わりますし、同じ法人であっても、地域、業界、企業規模、FC事業の経験有無などによって、求める企業の姿は千差万別です。

ところが、インターネットを介した募集では、そうした「まだ見ぬ具体的なターゲット」に向けて手探りでメッセージを届け続けなければなりません。
当たり前のことですが、たった一つの募集方法で、求めている相手すべてに届くわけではないのです。

BtoBであり、しかも「ビジネスそのもの」を買ってもらうフランチャイズの加盟店開発は、極めて難易度の高いマーケティング活動です。

だからこそ、加盟してほしいオーナー像を具体化し、それぞれに合う伝え方や接点を試していく。その試行錯誤の精度とスピードを上げるためにこそ、AIを役立てるという視点が必要ではないでしょうか。

加盟してほしい相手を決めても、簡単には見つからない

ある飲食チェーンの加盟店募集に関わった際、私が難しいと感じたのは、加盟を検討する層との接点をつくることでした。

一般消費財の広告とは異なり、「独立のためにフランチャイズへの加盟を考えている人」や「会社の新規事業として飲食事業への参入を検討している企業」は、限られています。さらに地域を限定すれば、その地域で事業を始める意向があり、必要な条件も満たす相手を探すことになります。

広告を見て「面白そうだ」とクリックする人はいるでしょう。しかし、興味を持つことと、資金や人材を投じて事業を始めようとすることには距離があります。広告の反応が鈍いとき、表現や配信設定だけを変えれば解決するとは限りません。

法人を対象にする場合も、難しさがあります。

特定の業界に、自社事業との相乗効果が期待できる企業があるなら、会社リストを用意し、DMなどで接点をつくる方法が考えられます。

一方、「新規事業を探している経営者」や「飲食事業に参入したい企業」は、業種だけでは絞り切れません。同じ業種でも、新たな事業を探している会社と、既存事業に集中している会社があります。その検討意向は、会社概要を見ただけでは分からないものです。

このような相手と出会う手段として、フランチャイズ専門のポータルサイトやSNS広告などが選択肢になります。

ただし、募集したい相手が明確であることと、その相手に広告を届けられることは別です。まずは、この難しさを踏まえて募集活動を設計する必要があります。

複数のオーナー像から、伝え方と接点を考える

では、加盟してほしいオーナー像を、どのように具体化すればよいのでしょうか。

一つの理想像に絞る必要はありません。自社のフランチャイズパッケージで事業を運営できる相手には、複数のケースが考えられます。

たとえば、自ら店舗に入り、独立する個人。既存社員を責任者に据え、新規事業として取り組む法人。すでに店舗事業を営み、別業態への展開を考える企業。それぞれ、事業への関わり方や準備できる経営資源が異なります。

個人であれば、本人が担う仕事、必要な資金、開業までの準備などが検討の中心になるかもしれません。法人であれば、店舗責任者の配置、既存事業との関係、社内での投資判断に必要な情報などが論点になるでしょう。

ここで大切なのは、相手の希望に合わせて募集対象を広げることだけではありません。資金、運営体制、経営への関与について、加盟者に求める条件を明らかにすることです。同時に、本部の研修や開業支援で、どこまで補えるのかも整理します。

そのうえで、オーナー像ごとに「何に関心を持つか」「何が不安か」「判断するために何を知りたいか」を考えます。同じ事業を紹介する場合でも、広告で最初に伝える内容や、その後に示す情報は変わってきます。

媒体も、このオーナー像との関係で選びます。

フランチャイズのポータルサイトでは、そのサイトに集まる閲覧者に向けて、他の募集案件と並んで自社の事業を紹介します。自社が求める層との接点が期待できるなら、利用する意味があります。一方、そのサイトが集める層だけでは、接点を持ちにくい相手もいるかもしれません。

そこで、自社広告と自社サイトをつなぐ動線も考えたいところです。

広告で関心を持った相手が、事業内容や加盟条件、本部の支援体制を自分で確認できる。さらに、本部がどのような考え方でフランチャイズを展開しているかを知り、問い合わせるかどうかを判断できる。こうした情報のつながりは、見込者が本部への信頼を確かめるうえでも重要です。

広告の表現だけを試すのではなく、その先で何を伝えるかまでを、一つの募集活動として考える必要があります。

試して確かめ、募集活動を見直すためにAIを使う

複数のオーナー像に対して、伝え方や接点を考えると、用意したい広告や説明内容も増えてきます。そこでAIを役立てる余地があります。

たとえば、同じ事業について、独立を考える個人には何を伝えるか、新規事業を探す法人には何を伝えるかを整理する。広告文の案を作り、訴求の違いを比較する。広告の先で説明すべき内容を、スライドや仮サイトにして確かめる。こうした試作や比較の作業にAIを使えます。

広告配信の側にもAIは組み込まれています。Metaは、利用者が関心を持つと予測される広告を選ぶ仕組みや、配信対象・予算配分などの自動化を説明しています。ただし、これは広告配信を支援する仕組みであり、自社に合う加盟者が見つかることを保証するものではありません。

候補企業へのアプローチでも、公開情報や顧客管理情報を整理し、企業調査や面談準備を支援するAI機能が提供されています。ここでも、情報から考えた提案の可能性と、相手が実際に加盟を検討しているかは、分けて確認する必要があります。

AIで複数の案を用意できても、何を確かめるために試すのかが曖昧では、案だけが増えてしまいます。

たとえば、「法人向けには、本部支援の説明だけでなく、店舗責任者が担う役割を示した方が検討しやすいのではないか」と仮説を立てる。その内容で広告と案内先を整え、問い合わせや面談で、運営体制についてどのような質問が出たかを確認する。これは実施例ではありませんが、試行錯誤の一つの進め方です。

反応があった相手は、想定したオーナー像に近かったか。伝えたつもりの条件が理解されていたか。想定していなかった相手にも、事業を運営できる可能性があるか。こうした確認から、次に試す内容を考えます。

外部の広告会社や制作会社に委託する場合も、募集対象や試したい内容を共有し、結果を一緒に確かめることが必要です。寄せられた質問や商談記録を整理する際にもAIは使えますが、募集方針をどう修正するかは、本部として判断する仕事です。

自社の加盟店開発について、次の点を確認してみてください。

*加盟してほしいオーナー像を、運営体制や事業への関与まで具体化しているか。

*複数のオーナー像について、伝える内容と接点のつくり方を考えているか。

*広告から自社サイト、問い合わせへと、検討に必要な情報がつながっているか。

*何を確かめるために広告や説明内容を試すのか、明確になっているか。

*反応や商談で分かったことを、次の募集活動に反映しているか。

AIという言葉を目にする今だからこそ、自社の募集対象と接点づくりを見直してみてはいかがでしょうか。加盟してほしい相手を具体的に描き、伝え方を試し、実際に出会った相手から学ぶ。その試行錯誤を進めるために、AIを役立てていきたいものです。

次回は、募集方針をスライドや仮サイトとして具体化し、何を確かめ、どう修正していくかを考えます。

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