
フランチャイズチェーンには、必ずその業態が成長した「理由」があります。価格、商品力、専門性、利便性、サービスなど、競合にはないセールスポイントがお客様から支持され、それが多店舗化、フランチャイズ化につながってきたはずです。
しかし、創業時に強かったセールスポイントが、10年、20年経っても同じように強いとは限りません。
消費者の生活や価値観は大きく変化しています。物価上昇、人手不足、少子高齢化、デジタル化、そしてAIの普及。こうした変化によって、お客様が店舗やサービスに求める価値そのものが変わっているからです。
そのヒントになるのが、長く成長を続けているチェーンです。
ブランドの核を守り、実現方法を変える
例えばコメダ珈琲店。同社が大切にしているのは、単に「おいしいコーヒーを提供すること」ではなく、「くつろぎ」という体験価値です。ゆったりした客席、フルサービスの接客、モーニングからティー、食事まで幅広い利用シーンを提供しています。
さらに同社自身も「お客様の“くつろぎ”は、時代によって移り変わる」とし、お客様や加盟店の声を取り入れながら、商品やサービスを進化させ続けています。
つまり、「くつろぎ」というブランドの核は変えず、その実現方法を時代に合わせて変えているのです。
「教える」から「最適な学びを提供する」へ
教育業界でも同じことが言えます。スクールIEは、単なる「個別指導」だけでなく、一人ひとりの性格や学力を診断し、それに合わせて講師、授業、カリキュラム、教材まで個別化する「個性別指導」を打ち出しています。
さらに映像授業なども組み合わせ、学習方法そのものを広げています。少子化が進む時代だからこそ、「教える」から「一人ひとりに最適な学びを提供する」へと、顧客に伝える価値を深化させている例と言えるでしょう。
「変えない価値」と「変える価値」を見極める
ここに、これからのフランチャイズ経営の重要なヒントがあります。
大切なのは、業態そのものを頻繁に変えることではありません。「変えてはいけない価値」と「変えなければならない価値」を見極めることです。
例えば焼肉店なら、「良い肉を提供する」という基本価値は変わらなくても、「家族で楽しむ店」「特別な体験ができる店」「健康を意識した店」など、時代によって打ち出す価値は変わります。
サービス業でも、「技術力」だけではなく、「時間短縮」「予約のしやすさ」「安心感」「パーソナライズ」といった価値が選ばれる理由になるかもしれません。
5年後も選ばれる理由になっているか
フランチャイズ本部の経営者には、ぜひ定期的に二つの質問をしていただきたいと思います。
「現在、お客様は何を理由に私たちを選んでいるのか」
「その理由は、5年後も選ばれる理由になっているのか」
過去の成功モデルを守り続けるだけでは、いつか市場とのズレが生まれます。
変えてはいけないブランドの本質を守りながら、「選ばれる理由」は変え続ける。
この不断の業態革新こそが、フランチャイズチェーンを10年、20年と成長させるために、本部経営者が担うべき重要な仕事ではないでしょうか。







