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AIがSVの仕事を奪う、という議論は本質ではない
近年、「AIが人の仕事を置き換える」という文脈で、
スーパーバイジング業務にもAI活用の話が持ち込まれることがあります。
しかし、フランチャイズの現場を知る方であれば、
すぐにこう感じるはずです。
・店舗ごとの事情は千差万別
・オーナーとの信頼関係は数値だけでは作れない
・現場の空気感や違和感は、人が感じ取るもの
SVの仕事は、もともと「人にしかできない要素」を多く含んでいます。
したがって、AIがSVを“置き換える”という発想自体が、現実的ではありません。
むしろ本質は、
AIをどう使えば、SVの能力を引き上げられるか
という点にあります。
SV業務のボトルネックは「考える時間がない」こと
多くのSVが抱えている課題は、能力不足ではありません。
・担当店舗数が多い
・日々の対応事項が多い
・数値確認、報告、資料作成に追われる
その結果、
本来最も価値の高い「考える時間」が確保できない
という構造が生まれています。
前回触れたように、
SVが扱う店舗運営の問題は、原因志向型のものが多く、
本来は冷静な分析と仮説立てが重要です。
ここに、AIの活用余地があります。
AIが得意なのは「整理」と「比較」である
AIは、創造的な経営判断を下す存在ではありません。
しかし、SV業務において次のような作業は非常に得意です。
・売上・客数・時間帯別データの整理
・過去データとの比較
・他店舗との傾向比較
・数値の変化点や異常値の抽出
これらは、
SVが「考える前段階」として必ず行っている作業ですが、
実はかなりの時間を奪っています。
AIを使えば、
「何が起きているか(What)」の整理を自動化し、
SVは
「なぜ起きているのか(Why)」を考えること
に集中できるようになります。
AIは「SVの経験と勘」を否定しない
ここで誤解してはいけないのは、
AIはSVの経験や勘を置き換えるものではない、という点です。
むしろAIは、
・経験豊富なSVが無意識に行っている比較や違和感の発見
・「なんとなくおかしい」と感じていた兆し
こうした感覚を、
数値とデータで裏付ける役割を果たします。
結果として、
・SVの判断に説得力が増す
・オーナーとの対話が感覚論から事実ベースに変わる
・指導が「個人の経験談」ではなく「再現可能な知見」になる
という変化が生まれます。
これは、SVの価値を下げるどころか、
SVを“よりSVらしくする”ための進化だと言えるでしょう。
新人SVを「一気に底上げ」できるのもAI活用の大きな効果
AI活用のもう一つの大きな意味は、SVの育成スピードです。
これまで新人SVは、
・ベテランSVの同行
・経験の積み重ね
・失敗からの学習
によって、徐々に力をつけてきました。
AIを活用すれば、
・データの見方
・着眼点
・過去の改善事例との比較
を短期間で共有でき、新人SVでも一定水準の分析・提案が可能になります。
これはSVの均質化であり、
チェーン全体の底上げに直結します。
AI活用の成否は「本部の設計」で決まる
ただし、AIは魔法の道具ではありません。
・データが整理されていない
・入力ルールがバラバラ
・SVごとに使い方が違う
こうした状態では、AIは力を発揮しません。
重要なのは、
AIを使う前提でSV業務とデータを再設計することです。
・どの数値を見るのか
・どこまでをAIに任せるのか
・最終判断は誰が行うのか
この設計こそが、本部の役割です。
AIはSVを支える「参謀」である
これからのSVは、
・AIが整理した情報をもとに
・現場の状況と照らし合わせ
・オーナーと共に改善を考える
そんな “経営に近い存在” へと進化していきます。
AIはSVを置き換える存在ではなく、SVの思考力を拡張する参謀です。
SV × AI という組み合わせが機能したとき、
加盟店の利益改善は、個人技ではなく「組織の力」になります。








