SV機能は「個人」ではなく「組織」で強くする

前回まで、フランチャイズチェーンにおけるスーパーバイジング機能について、段階的に整理してきました。
今回は、それらを踏まえたうえで、「では本部は何をすべきか」という問いに向き合います。

SV機能が属人化してしまう本当の理由

スーパーバイジング機能がうまく機能していない場面を見ていくと、問題はしばしばSV個人の力量に帰されがちです。

「担当SVが優秀かどうかで店舗の状態が変わる」「SVによって指導内容にばらつきがある」といった声は、決して珍しいものではありません。

しかし、この見方は本質を捉えているとは言えません。

SVの仕事は、もともと個人技で成立させるべきものではないからです。

SVが一定の成果を出せるかどうかは、その人の能力よりも、「どのような環境で仕事をしているか」に大きく左右されます。

つまり、SV機能の強さは、個人の資質ではなく、本部体制の設計によって決まるのです。

利益視点・問題解決・AI活用はすべて「体制設計」の話である

利益を意識したスーパーバイジングを行おうとすれば、SVが感覚や経験だけに頼らず、事実と数値に基づいて判断できる環境が必要になります。

問題解決においても、どこまでを標準化し、どこからを個別判断に委ねるのか、その線引きが明確でなければ、SVは迷い続けることになります。

さらに、AIを活用するのであれば、データの整備や業務プロセスの整理が前提となり、これもSV個人に委ねる話ではありません。

こうして見ていくと、スーパーバイジング機能を強化するというテーマは、SVを教育する話である以前に、本部がどのような仕組みを用意するかという経営課題であることが分かります。

SVが考える時間を確保できるか、問題解決の型が共有されているか、改善事例が組織の知見として蓄積されているか。

これらが整っていなければ、どれほど優秀なSVを採用しても、期待する成果は安定して生まれません。

スーパーバイジング再設計がチェーンの持続性を決める

逆に言えば、本部体制が整えば、SVは過度に属人的な頑張りをしなくても、一定水準以上の支援ができるようになります。

その結果、加盟店側も「SVが変わったから調子が悪くなった」「前任者の方が良かった」といった不安を感じにくくなり、チェーン全体としての安定感が高まります。

スーパーバイジングが個人依存から組織機能へと進化することで、チェーンは初めて持続的な成長基盤を手に入れるのです。

これからのフランチャイズ経営において重要なのは、SVに何を求めるかではなく、SVが価値を発揮できる土台を本部が用意できているか、という視点です。

利益視点、問題解決の標準化、AIの活用。これらはすべて目的ではなく手段であり、最終的にはチェーン全体の利益と持続性を高めるためのものです。

スーパーバイジング機能を見直すことは、SVを変えることではありません。

チェーン経営の考え方そのものを、次の段階へ進めることです。

フランチャイズ本部の体制としてSV機能をどう再設計するのか。

その問いに向き合うことが、これからのフランチャイズチェーンにとって避けて通れないテーマになっていくはずです。

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