優秀なSVが辞めても揺るがないFC本部を作る「3つの仕組み」

■ はじめに:優秀なSVの存在が「本部の脆弱性」を隠す

フランチャイズ(FC)本部の経営者にとって、現場の最前線で加盟店を支えるスーパーバイザー(SV)は、ブランドの生命線と言える存在です。

しかし、もしあなたの本部のSVが「個人のセンス」や「長年の勘」だけで高い成果を出しているとしたら、それは「組織としての成長」を止める大きなリスク(脆弱性)をはらんでいるかもしれません。

「あのSVがいなければ、このエリアは持たない」「彼にしかできない高度な指導がある」――。

こうした賞賛は一見ポジティブに聞こえますが、裏を返せば「本部が機能としてノウハウを保有していない」ことを意味します。属人化した運営から脱却し、誰が担当しても一定以上の成果が出る「本部の資産」をどう築くべきか。その核心に迫ります。

■ 「勘に頼るSV」が生まれる3つの構造的背景

なぜ、多くの本部でSV業務の属人化が解消されないのでしょうか。そこには3つの構造的な要因があります。

1. 判断基準の「暗黙知化」

何が「良い状態」なのか、その基準が言語化・数値化されていないため、SVは自身の主観で指導せざるを得ません。結果として、SVによって指導の重点が異なり、加盟店側が「前の担当者と話が違う」と困惑する事態を招きます。

2. 成功体験の「ブラックボックス化」

トラブルを未然に防いだ手法や、売上をV字回復させた具体的なプロセスが、SV個人の記憶の中にしか蓄積されません。本部は「結果」としての数値は把握していても、その「プロセス(ノウハウ)」を組織の知恵として抽出できていないのです。

3. 教育の「現場丸投げ」

体系的な研修カリキュラムが不足しており、新任SVは「先輩の背中を見て盗む」スタイルで育ちます。これでは、個人の資質に依存した、指導にばらつきのあるSVしか育たず、育成スピードも上がりません。

■ 優秀なSVが辞めた瞬間に失う「見えない資産」

エース級のSVが一人離職することは、単なる欠員以上の打撃を本部に与えます。

加盟店との信頼関係の断絶:特定のSVにしか話さなかった店主の本音や、これまでの「貸し借り」の経緯がリセットされ、加盟店が本部への不信感を強める原因となります。

●指導品質の急激な低下:後任者が「前任者のやり方」を模索している間に、店舗のQSC(品質・サービス・清潔感)や収益性は瞬く間に低下します。

●組織の停滞:ノウハウの蓄積がないため、本部は常に「新人の失敗」を繰り返し、いつまで経っても組織全体のレベルが底上げされません。

■ 解決策:スーパーバイジングを構造化する「3つの仕組み」

特別なIT投資を検討する前に、まず取り組むべきは「本部という組織のOS」を書き換えることです。

1. チェックリストによる「判断の標準化」

「店舗は清潔か?」という曖昧な問いではなく、「床にゴミが落ちていないか」「什器の指紋は拭き取られているか」といった、誰がいつ見ても○か×かで判断できる基準を明文化してください。基準が揃うことで、初めて「組織としての指導」が始まります。

2. 指導履歴の「ログ化」と知見の共有インフラ

日報を書くことが目的になってはいけません。
「いつ、どの加盟店に、どんな課題を提示し、店主はどう反応したか」という指導のプロセスを案件ごとに時系列で蓄積する仕組みが必要です。
これらが「ログ」(記録)として共有されることで、担当交代時もスムーズに引き継げ、他エリアの成功事例を自エリアに転用することも可能になります。

3. 「役割の階段」と連動した評価・教育

以前の連載で解説した「SVの役割の階段(レベル1〜3)」を、具体的なスキルマップに落とし込みます。

✅️ レベル1:基本チェックと報告(チェック項目を理解し、正しい現状把握ができる)

✅️ レベル2:自立した巡回と改善提案(加盟店と信頼を築き、改善の「型」を提案できる)

✅️ レベル3:課題改善の主導(複数店舗を横断的に分析し、経営改善プロジェクトをリードできる)

どの段階にいるSVが、どの情報を武器に、どのようなアクションをとるべきかを定義することで、再現可能なSV育成が実現します。

■ まとめ:SVを育てる前に、本部という「土壌」を育てる

「優秀な人がいれば本部は強くなる」というのは、成長期の幻想です。真に強い本部は、「誰が担当しても、一定水準以上の指導を提供できる仕組み」を持っています。その盤石な仕組み(土壌)があるからこそ、個々のSVの才能がさらに花開くのです。

まずは自社のスーパーバイジングが、どれほど「SV個人の記憶」に依存しているか、一度棚卸しをしてみませんか。

次のステップ:自社の「本部機能」を診断してみる

「自社のSV業務、どこから手をつければいいのかわからない」とお悩みの経営者・幹部様へ。

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